中国・アジアの工場進出情報

2015.9.1 Vol.27 No.15
ビジネスレポート
ポイペトはタイの労働集約工場の最高の進出先

 7月1日号の本誌でタイ国境からカンボジアに一歩入ったところにあるタイから最も近いSEZ(経済特区)があるポイペトの現状を紹介したが、この8月に、バンコクから陸路で東へ310キロ、サケーオ県アランヤプラテートから徒歩でカンボジア国境を越えたところにあるポイペト、陸路で首都プノンペン近郊などを再訪してきた。すでにポイペトで操業中の日系企業はSEZ外で操業中の日本電産グループの1社だけという現状ながら、ポイペトには近く日本企業が集積する予感がした。SANCOポイペトSEZゼネラルマネージャー(GM)の山田与重氏は「現在フェーズ1の約7割が契約済あるいは予約済で2015年中の完売をめざしている」と言い、同SEZではNHKスプリング(日本発条)が約4万6千平方メートルの敷地で工場建設が始まっている。計画中も含め3件のSEZ(経済特区)が集積するポイペトだが、ポイペト国境のタイ側にもSEZが計画されている。これはタイの暫定政権で周辺各国との国境近くのタイ側にSEZを作る計画を進めているもので、ポイペトに近いサケーオ県にも作ると発表している。タイの国境SEZ新設は国境貿易を活発化させることなどを表向きの目的としているが、実は日々の通勤さえ認めて周辺国からの労働力を確保、SEZ内で管理したいとも考えている。労働集約企業の周辺国への流出を止めたいと考えているタイ政府のSEZ計画は、タイの産業を高度化して「中進国の罠」に陥らないようにしたいという方針と矛盾しているだけでなく、国境近くのSEZ内に「隔離」する周辺国からの労働者には現在周辺国からの労働者にも適用しているタイの最低賃金の日給300バーツから下げたいと考えている向きもあるなど安易な計画であり、ラオスなど周辺国もタイの国境にSEZ開発に反発しており、計画倒れになる可能性もある。
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